2020 南山学園概要

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- うことです。在来の伝統的表現に従えば、人間は知・情・意 を具えた人格的存在であり、社会生活を行なっているもの です。人間というものは、片寄った一面からだけ把えられる べきものではなく一人一人の人間が「全人」即ち「現実に生 きているあるがままの人間」として考えられるべきであり ます。こういう「全人」的人間の形成を目標に掲げたのが南 山学園のキリスト教に基づく人間の尊厳という教育理念で あります。 一つの私立大学で、しかも特殊な使命をもって創立され、 その伝統の下に存続している南山大学のような大学にとっ ては、開学の理念を反省することは、国・公立の大学以上に 大切であります。そこには、変革されるものと、され得ない ものがあるからです。その意味で、きょうの開学記念式典に あたり特に本学園創立と本学開学の理念を、簡単ではあり ますが反省してみました。 いずれ、あらためて、 今は故人となられた学園創立者及び 大学創立者が、創立に際して抱いておられた理想、教育の 理念などを、より具体的にまとめてふりかえり考える機会 をもつことが大切であると思います。 (1970年)
た長年に亘って若い日本人の教員を学位取得あるいは研 究のために、海外留学させるように努力してきた。この課程 で南山大学は学問的レベルにおいても、日常的レベルにお いても、東と西の対話が重要な役割を果している場として 名声を博してきた。 南山の創設者達が海外から日本に到来した時に抱いて いたのと全く同じ普遍的な精神で、日本で伝統的に強くみ られる偏狭なナショナリズムを超越して、国際性を志向す る教育計画を現在も推進し続けているのである。それぞれ の文化にはそれぞれの制約があり、したがって全地球的な 共通善を追求するために他の文化と協力しなければなら ない、という意識をこの国際的視野は芽生えさせてくれるし、 また国際的な十字路を創り出し、ここを通過するすべての 人が異なった文化背景をもつ人の目を通して、自らの文化 遺産のもつ深み、美しさを再認識させてくれるのである。 若い教員を可能な限り海外の大学へ、少なくとも1年間 は留学させたいという方針、外国語、外国文学に関する科 目の重視、学生が外国の大学で1年間勉学の機会が得られ る海外留学制度、外国の学者が南山の招請により、本学で 1年間教育・研究に従事するという招聘教授制度、日本研
国際的視 野
第3代南山大学長
究センターで開講される科目の受講のために、海外からの 留学生を受け入れる制度等々は、南山大学が志向する異 文化交流計画の中で重要な役割を担うものである。 南山大学は、キリスト教精神、卓越した学問的水準、地域 社会との協力、国際的視野-この四つの特徴の一つ一つ を通して、人間の尊厳のために奉じるという誓約に応えよ うとしているのである。われわれが、成功か不成功かを問 わず、この事業を遂行する際に常に銘記していたいと思う ことは、われわれが自分自身に属する身ではないというこ
ヨ ハ ネ ス ・ ヒ ル シ ュ マ イ ヤ ー
設立の当初から現在に至るまで、 その小さな規模からは 考えられないほどの広範に亘る国際的な連繋を有している ことは、南山大学の特色の一つとして誇るべきものである。 その教授陣には常に多数の外国人学者・研究者を擁し、ま
とである。われわれは自分達が真に属するものによって、短 期間この世にいわば貸し付けられている身である。互いに 力を合わせ、愛の精神で、われわれはその信託に応えるこ とができるのである。 (1979年)
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