2020 南山学園概要

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- るが、このことは内外に於て、次第に認められつつあるので ある。この特色を要約すれば、次の三点となる。 一、カトリック教をして、教育原理、教育施策の基盤たらし め知的・情操的・並びに道徳的に円満な人格をめざし、こ れを以て、人間を、 その達し得べき最高の尊厳へと導く資と するのである。これこそは南山の有する究極の目的であり、 “Hominis Dignitati"(人間の尊厳のために)なるモットーに、 遺憾なく表明されているのである。 二、特に南山の教育目標は、次の如き特性を具えた青年 子女を育成することに向けられている。(イ)広い教養。かか る教養を修得するために、近代的方法に依る外国語の研鑽 に重きが置かれている。(ロ)高い理想に燃える人格。かか る人格は、人生の宗教的把握を通じて到達されるものであ るが、 その宗教的把握なるものは、理想達成の手段として 奨励され、明確に、しかも何等強制されることなく指導せら れるものである。(ハ)強い責任感。個人並びに社会的存在 として、一般的、特殊的諸業務に対する強い責任感を養成 するために、学生の自己淘汰には特に意を用いて計画がな され、これを補うために良心的指導組織が存在する。 三、当地方諸大学のうちにあって、南山大学はその特異 なる特徴として、国家の諸問題を国際的基準にたって処理 し得る様な、国際的精神を持った学生をつくり上げるのを 目的としている。従ってこの目的達成のために、本学は次の 手段を学生の手に託している。(イ)諸外国よりの強力な学 者陣、並びに国外に於て学業を研鑽した有能な日本人教授 陣。(ロ)国際的範囲に渉る書籍、雑誌を擁する図書館。(ハ) 最も将来性ある卒業生たちの為の国外留学生制度。(現在 15名が外国の諸大学に、留学中である。) 新制大学として、南山大学は新学制が真摯に遂行せら れた場合、 その究極的成功を信ずるものである。新学制は、 現在、本学当局者の最も重要な関心事であって、学究運営 両面にわたる討論を通じ真に民主的な方針に従って、教科 の教育方法、教授、生徒間の関係等の改善に、大いに努力
しつつある。 創立後日猶浅きことのために、不可避的に生ずる諸欠点 に或程度悩みつつも、南山大学は、高等教育の分野に於け る重要な因子としての健全な発展を国の内外を問わず確 信を以て予測せられるまでに生長して来ているのである。 (1953年)
HOMINIS DIGNITATIに ついて
第7代南山学園理事長
アルベル ト ・ ボル ト
1947年のある日、上智大学クルトゥール・ハイムにあった 中央事務局から四ッ谷駅に向う帰り道で、突然、 “the Dignity of man"“Hominis Dignitas"という言葉が私の脳裡 にひらめき、これこそ、 今の社会に最も大切なことであると いう考えが、私の心に強くうったえるものとして迫ってきた のであります。結局、人間とは何であろうか、人間は生物学 的に進化した唯一の動物である。あるいは、人間というもの は自然を破壊し、征服するものである。人間はただ法律の 対象になるものである。あるいは、「人間は万物の尺度 “metros"である。」さらに、人間は神のimage(似像)である。 というように、人間を様々に考えることによって、将来の社 会は異なって来るものであります。私は、「 人間の尊厳」をめ ぐって考え、しばらくの間、道端に立ちつくしていたのであり ます。この時いらい、私は終始人々とこの考えについて話し 続けたのであります。そして、南山大学の大講堂(現南山学 園講堂)が完成し、大学の新しいモットーを定めるときに “Hominis Dignitati"を提案したのであります。
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