学園概要 理事長メッセージ

学校法人南山学園 理事長 市瀬 英昭

1907年9月8日、3名の神言修道会(通称:神言会)会員が日本での活動のために派遣され横浜に上陸しました。それは仙台以北のカトリック教会の責任者であったアレキサンドル・ベルリオーズ司教の依頼に応えるものでした。横浜に上陸後、時を移さず彼らは秋田へ移動し活動を開始した、と記録されています。これが今日では世界82ヶ国で活動している男子修道会、神言会の日本管区の始まりです。将来、南山学園を創設することになる同会会員のヨゼフ・ライネルス師は1909年8月に来日しています。日本におけるカトリック教育の重要性を痛感していたライネルス師は「高潔、誠実、善良であれ」「一人ひとりは、必ずひとつの尊い使命を与えられた、かけがえのない存在である」との確信のもと、名古屋の地に、1932年に中学校を1936年には小学校を創設し、今日の南山学園の礎を築きました。師自身はその後の南山学園の発展を見ることなく、1945年8月28日に岐阜県の多治見修道院で逝去し、同修道院敷地内の会員墓地に眠っています。

ライネルス師はじめ多くの先達のご苦労、善意の方々の献身的な働きによって引き継がれてきた南山学園は、名古屋聖霊学園および聖園学院との二度の法人合併を経て、幼稚園から大学院まで9つの単位校を含むカトリック総合学園となっています。本学園はキリスト教世界観、人間観に基づいた教育を目指しており、学園内の各設置校はそれぞれの歴史と校風を持ちながら「Hominis Dignitati(人間の尊厳のために)」を教育モットーとして共有しています。このモットーは、ライネルス師の信念を引き継ぐ形で、第7代南山学園理事長アルベルト・ボルト師が発案したものですが、それは個人的な理想ではなく、聖書、キリスト教の人間観、いのち観の表現となっています。

旧約聖書は、詩的な表現をもって

「神は、土(アダマ)の塵で人(アダム)を形づくり、その鼻に息を吹き入れられた。人はこうして生きる者となった」(『創世記』2章7節)

と記しています。一人ひとりの人間が、例外なく、神の息を吹き入れられた侵すべからざる存在であるということの厳粛な宣言です。社会の中で、教育の現場で、今日ほどこの「根本的な肯定」が必要とされている時代はないかもしれません。そして、本学園に属する幼児、児童、生徒、学生は「無条件に受容される」だけでなく、他者の尊厳のために力を尽くす人間となっていくよう励まされています。

新約聖書の中には、共同体内のメンバーの違いを認めながら協働するよう勧めるパウロの手紙があります。

「わたしは植え、アポロは水を注いだ、しかし、成長させてくださったのは神である」(『1コリント書』3章6節)

南山学園における教育事業も、そのように、わたしたちを導く「大いなる存在」に信頼を置いてなされるものでありたいと思います。

また、「人間の尊厳のために」は、ひとり本学園のみならず、また現代世界へ向けて発せられるべきメッセージでもあります。人間は責任的存在である、と言われますが、この「責任を持つ」という在り方、あるいは、見返りを求めない「無償の愛」という行為は、時代がいかに進歩しても、AIやロボットが取って代わることのできない、人間の尊厳に固有な特徴であり続けるであろうと思われます。

今後も、南山学園が、単なる現状肯定ではなく、あるべき社会の形成へ向けて貢献する人材を送り出していくことができるよう、教職員の皆さんのお働き、同窓生の方々のご支援、そして地域社会の皆さんのご理解とご協力をお願いする次第です。

理事長基本方針