理事長・大学長対談


はじめの一歩を大切にしたい。南山大学附属小学校 開校

新しい教育モデルを地域に発信

4月6日(日)、名古屋市内に新しい小学校がスタートした。南山大学附属小学校だ。学校説明会に約5,000名の参加者を集めるなど、地域の期待も大きい。新しい小学校ではどんな教育方針の下で、どんな教育が行われるのか。そして南山大学も含めた学園全体の将来像はどのようなものか。4月から学園理事長とともに小学校の校長を務めるハンス ユーゲン・マルクス氏と、前理事長で4月から新学長に就任したミカエル・カルマノ氏のお二人に、学園の理念も含めて語っていただいた。 
(聞き手/中日新聞前編集局社会部・倉知哲也)

ミカエル・カルマノ南山大学長

ミカエル・カルマノ南山大学長×
ハンス ユーゲン・マルクス
南山学園理事長 
南山大学附属小学校長

ハンス ユーゲン・マルクス南山小学校長

■南山学園の教育理念は


-- 南山学園は一九三二年に財団法人南山中学校(旧制)が設置されて以来、今年で七十六年目という長い歴史と伝統を有しておられます。中部地方を代表する私立学校法人としての教育理念をお聞かせください。

マルクス 私立には、公立の学校と違って独自の教育目的があります。南山の場合、それがキリスト教精神に基づく人間の尊厳を大切にする人材育成を図るというところに特徴があります。一人ひとりの人間には、母の胎内に宿った瞬間から侵すことのできない尊厳があり、個人としてかけがえのない存在であるということが、キリスト教精神の要となるもの。南山学園にあっても、創立以来一貫して「人間の尊厳のために」という教育のモットーを掲げてきました。一人ひとりがまず人間の尊厳に気づき、自分と同様にかけがえのない存在として他者を尊重する。そうした人を育て、その周りに大きな輪が広がることで、社会が変わっていくのではないか。そうした確信を持って教育活動に臨んでいます。

カルマノ 南山学園の創立者であるヨゼフ・ライネルス神父は、国家に役立つ人材を育てるという戦前の教育体制の下にあっても、国家主導ではなく個人や家庭こそが教育を進める主体となるべきという考えで、新しい学園づくりを進めていきました。各家庭が教育の主体となる--そうした創立以来の基本理念を理想的な形で実現させていくことに、公立とは異なる私立としての存在意義があると考えています。

対談1
■一貫教育のメリットとは


--附属小学校開校によって、小学校から大学までの一貫教育体制が完成するわけですが、そのメリットや狙いなどをお聞かせいただけますか。

マルクス まずメリットを挙げますと、学習塾に通うことなく、幅広く、または好きなことを深く学べる余裕ができるということでしょう。南山小学校では、子どもたちが将来何をやりたいか、どのような形で他者・社会に役立ちたいかを、できるだけ早い時期に自ら定め、それに合った学校を選ぶという教育を行っていきたいと考えています。その目的に学園内の設置校が合うならば、そこに進む道筋は整えられています。

--大学の附属小学校としたことの意味について教えていただけますか。

カルマノ 私が理事長を務めていた時代に理事長方針として、学園内の各設置校の連携強化・深化を訴え、それに向けての努力を各設置校に呼びかけたことがあります。連携を深めるために一番有効な形となるのは、大学を中心にして各設置校を大学附属校という形におさめることです。そのため、小学校開校の構想が浮上したときに、必然的に大学附属校とするという選択肢が出てきました。大学を中心にした一貫教育というスタイルを取ることで、全人教育という南山学園としての教育の理想により近づいていくことができると考えています。  大学附属校と位置づけることで、大学の先生方が構想・企画段階から小学校に関わっていただくことができたことも大きいですね。結果として大変魅力的な仕組みができたと喜んでいます。
 
■南山小学校が目指すもの


--より幅広く初等教育を展開するにあたり、南山小学校が考える、あるいは目指している教育とはどんなものかお聞かせいただけますか。

対談2マルクス 南山小学校では教育の「三つの柱」を掲げています。
一つめは、「確かな学力と人間力を身につける」ということです。たしかな学力を身につけるため、特に一、二年次での国語・算数の教育に力を入れ、公立小学校よりも多くの時間を割きます。だからといって、知識偏重の教育を進めるわけではありません。たくましく生きるため、人の役に立つ人間となるため、確かな知識を状況に応じて「知恵」に変える力をつけることを究極の目的としています。「考える力」と「やさしい心」。この二つが私たちの進める教育のキーワードです。「やさしい心」があってはじめて、問題の所在や他者の悩みに気づくことができ、問題発見・解決型の思考能力を持つことができるのです。
二つめの柱は、「小学校から大学までの一貫教育」です。これが全人教育を目指す南山学園本来の姿勢だと考えています。児童と保護者が望めば、新しい南山小学校から校長の推薦により、学園内の三つの中学校へ進学できる仕組みを整えています。しかし、それは決して当学園への抱え込みを意味しません。あくまでも児童と保護者の選択を優先します。南山で六年間の初等教育を受けただけでも一生忘れ得ない経験が味わえるよう、子どもたちの将来に向けた夢の実現へのサポートには全力を尽くす所存です。
三つめの柱は、「学校と家庭との教育連携」です。日本では教育の現場というと、たいていの人が「学校」を第一のものとして挙げます。しかし、これは間違っていると私は考えます。まず「家庭」、その次に「学校」、そして「地域」の順に考えていくべきなのです。ですから、「子どもを学校に預ける」という姿勢ではなく、学校と一緒にわが子を育てる姿勢が家庭にあるか否かという点を私たちは重視しています。こうした姿勢は、一九三〇年代に一時期開校されていた南山小学校の方針でもあったものなのです。

カルマノ 小学校開校を構想した段階から、これは地域のニーズに沿った取り組みだと確信していました。しかし、春と夏に二回開催した学校説明会には、合計して五千名以上の方に集まっていただき、その反響の大きさにびっくりしたものです。

マルクス 「初等教育でもこんなことができるぞ」という発信が、南山小学校からできればいいなと思っています。公立小学校と私たちとはずいぶん条件が違いますが、新しい教育の可能性を示すモデルとして見ていただければと考えています。
■大学教育へどうつなげていくか


--小学校教育で得られたことを大学教育にどのように結びつけていくか、どう生かしていくかが、今後の課題かと思われます。小学校長としての立場から、大学教育に何を期待していらっしゃいますか。

マルクス 大学には一学年で二千二百名ほどの学生がいます。その中に南山小学校出身者が八十〜九十名含まれていけば、周りにそれなりの力を発揮できるでしょうし、これまでにも増して、南山らしさを大学の現場でも感じられるに違いないと思っています。
今回の小学校入試の際に、こんな例もありました。ある保護者に志望の動機を伺ったところ、自ら私立大学の附属小学校から大学まで過ごした経験から、南山小学校開校の話を聞いた段階で「ぜひわが子を入学させたい」と考えたのだそうです。その附属小学校出身者の団結力、絆の深さにとても感銘を受けているからこその志望だったのですね。

--反対に大学側から見た場合に、教育の入り口となる小学校教育に対して、どんな期待を持ち、希望を抱いていらっしゃいますか。

対談3カルマノ 初等教育の場である小学校はまた、大学の学生にとっても良い教育の場になると考えています。大学の学生を派遣し、放課後に子どもたちに勉強を教える機会を設けていくことを予定しています。子どもたちは学習塾などに通わなくても、学校内のアフタースクールで大学生のお兄さん、お姉さんに勉強を教えてもらうことができる仕組みです。教職の免許を取得したいという学生などにとっても、教える経験を持つ良い機会になることでしょう。

  新しい小学校では、大学と同じように必修科目ばかりでなく、さまざまな選択科目が受講できるようになるといいですね。子どもたちが自分の興味・関心にしたがって自由に学びを選んでいける。受験の心配がなくなる一貫教育というスタイルでは、こうしたことも可能になるんですね。そうした自由な学びを経験した学生が大学に入ってくることで、大学の雰囲気も変わってくると考えます。


■学園全体の将来展望は


--最後にお二人から、新しい小学校の展望、大学の展望、加えて学園全体の今後の展開などについてお話をいただけますでしょうか。

マルクス 先ほども申しましたが、小学校としては初等教育のレベルであっても、こんなこともできるのだというモデルを提供していけたらと思っています。幸い、新しい学校づくりを進めるに際して、全国からとても優れた先生方に集まっていただくことができました。皆さん、教育に対して深いお考えをお持ちであると同時に、熱い情熱を抱いている方ばかりです。まだまだ、私たちの学校づくりは始まったばかりであり、今後新しい児童、そして教職員を迎えていく中で、さらに教育内容を充実させていきたいと考えています。
また、学園全体の話では、前理事長が掲げられた学園内の各設置校同士の連携がますます強く、そしていっそう深くなっていくよう、取り組んでいきたいと思います。

カルマノ 各設置校間の連携について考え始めて、すでに五年ほど経ちます。その具体的な成果が新しい小学校の開校に結びついたのは、私としても喜ばしい限りです。学長として、今後の大学をどんな方向に導いていくか。それについては、現在熟考を重ねているところです。南山学園が創立以来、一貫して追究してきた全人教育の理想実現に向けて、私たちがどんなことができるか、どんなキャンパスづくりができるかを考えています。前学長の下でさまざまな大学改革に取り組んできた結果、本学を志望する学生の数も順調に伸びています。そうした期待に応えるよう、さらなる取り組みを積極的に進めるべく準備に取りかかっています。 (企画・製作/中日新聞広告局)



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学校法人南山学園