NO.17
「焼き物屋になってみて…」?


石野 晃 (大33期 経営)
不図したきっかけで焼物をやることにした。何となく就職をした会社を辞めてである。陶芸に固執した訳ではない。周りは驚いたが、自らが決断した自分でできると思えたものだから。25才を過ぎて弟子入りをし、陶芸のイロハを学んだ。他に先生や先輩の世話、焼物と無縁の作業も多かった。5年半ほどして独立。この間に結婚、子供もできて一応世間並みにはなったが生活は貧しかった。振り返れば充実し、豊かであったように思う。まだまだ元気一杯だったのだ。
30才を過ぎた頃、岡山へ移り備前焼を始めておよそ10年になる。生活のための身入りはあまり向上していないが、生活の楽しさは持続し、いくらか元気の良さが減った分を補ってくれている気がする。仕事や家庭、地域での暮らしなど部分的に辛いことはあっても、トータルで自分の生活が豊かであればそれで満足。生来、私には田舎暮らしが丁度よいようだ。
備前焼は土の塊から成形し、登り窯に入れて沢山の松割木で何回も焼く。単純で原始的だが偶然性も多く、故に奥も深い。末長く楽しんでいこうと思っている。1200度にもなる窯の火を眺めていると、一週間ほど薪を焚き続けてきた体は疲れていても心は安らいでくる。傑作を造ろうという使命感、気負いはあまりなく、単純に作業を楽しんでいきたい。時々各所でする個展、人前に拙作をさらけ出す時は冷や汗のかぎりだが、人に出会え話ができることは実に楽しみだ。友人と遊び、家庭や仕事など今の私にはあまり時間の区別がないが、苦痛ではない。職業で自由業に分類される所以だろう。
20才を過ぎて四回生になって、就職を前にしても自分の人生、何を目標とし生業とするかなど、とんと決まらなかった。もうすぐ40才が近い。ようやくスタートラインに立った思いである。
私のような卒業生の中でも変わり種、是非こちらへの機会あれば連絡下さい。

住所/岡山県和気郡和気町吉田     1781 
   TEL0869-93-1344    CBS/sony 勤務を経て結婚。夫と息子三人。



略歴
昭和36年 愛知県に生まれる。
昭和59年 南山大学経営学部を卒業。
昭和61年 陶芸を志し、愛知県瀬戸市にて陶芸を学ぶ。 加藤 金小師事。
平成1年  朝日陶芸展’89入選。
平成2年  朝日陶芸展’90入選。
      第22回、日展入選。
平成3年  第11回日本陶芸展入選。
平成4年  岡山県に移り、作陶を始める。