第1弾 南山学園理事長と南山大学長

理事会のリーダーシップの下での南山大学を中心とした教育の連携を実りあるものへと進めていくために

南山学園が今日の規模と内容を備えるまでに成長したのは、当学園に対する社会的な期待があればこそと思われます。昨年、理事長が当学園の基本方針を表明されましたように、学園内の各単位校はこの基本方針にベクトルを合わせ、学園内が一体となって、さらなる教育・研究活動の向上を目指すことこそが、当学園に対する社会的期待に応えることにつながると思われます。
そこで本日は、理事長の基本方針にも示されている「学園内連携推進の強化」について、特に理事会のリーダーシップの下での南山大学を中心とした教育の連携を実りあるものへと進めていくために、お二人のお考えを伺ってまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。


まず「南山大学が、学園において教育の連携についての中心的な役割を持っている」という視点から、最近の南山大学について理事長が気づかれていること、あるいは学長ご自身が気づかれていることについて、お話しいただければと思います。まずは理事長からお願いいたします。



南山学園理事長 Michael Calmano.

理事長:
私自身が注目しているのは、いわゆる「社会人入学」が多くなっていることです。特に、大学院での「教育ファシリテーション専攻」や「ビジネススクール」などの設置ですね。こうした動きの中で、南山大学がもたらす社会的インパクトもより大きくなっていくのではと思います。理事長基本方針で示したように、南山大学を中心として各単位が連携を取って進んでいくためには、大学自体がより魅力ある存在になっていかなければなりません。東海地区だけでなく全国的にも「魅力ある大学」として認知されるためには、常に社会的ニーズや期待に応えるような教育を進めることが必要です。
もう一つのポイントとなるのは、南山学園全体で多くの卒業生を送りだしていますが、学園としての共通点、特色といったものをどのように出していくかという点です。その特色を具体的な形で示すのが大学だと思うのです。





南山大学長Hans - jurgen MARX

学長:
いま理事長がおっしゃったように、魅力ある大学となるためには、社会のニーズに応える大学でなければなりません。そのためには、社会のニーズが何であるかをきっちりと捉え、それに応える教育プログラムを提供しなければなりません。理事長が挙げられた社会人入学は、まさしくそうした発想から生み出されてきたものです。今年4月1日からスタートした「ビジネススクール」もその一つであります。この地域の大学の多くが「ビジネススクール」と名乗るコースを設けていますが、その多くが単なる従来型の経営学研究科であるのに対し、本学の場合は真のMBA取得の要件を満たした本来の意味でのビジネススクールとしてスタートしました。これは中部地区では初めての試みであったのです。理事長もご存じのように、私自身これまでいろいろな機会を通じて「ビジネススクール作るべし」という意見を表明してきました。それだけに、実現にまでこぎつけることができたのは、非常にうれしい限りです。この試みが社会のニーズに応えたものであったことは、当初の想定よりも多くの入学希望者が集まったことにもよく表れていると思います。アメリカの大学などでは、社会人が大学へ通うことは当たり前のこととなっています。本学においても、これまで社会人入学が全然なかったわけではありません。神学とか文化人類学、哲学などの専攻においては、以前から60歳代、70歳代の学生が在籍していました。
専門職大学院としては、現在の日本では「法科大学院(law school)」と「ビジネススクール」の2種類ができています。文科省がさらに進めているのは、教員養成のための専門職大学院です。私自身は当初、この専攻の設置に対しては消極的でした。日本の私立大学のほとんどが消極的だったと思います。しかし、民間人校長採用への道を開こうという動きとともに、本学園が総合学園として発展する一環として小学校の設置をも射程に入れる中で、教育者養成のための専門職大学院の設置を目指してもいいのではと思うようになりました。私の任期はあと2年を残すだけですので任期中の実現は難しいでしょうが、文部科学省の動きを見た上で適切な場合、実現に向けての道筋はつけておきたいと考えています。
もう一つ理事長のご指摘にありましたように、南山大学は確かに学園全体の牽引者の役割を果たすべき存在です。幸いにも、この地域では本学は非常に高い評価を受けております。ただし、我々が深刻な問題として受け止めなければならないのは、本学がまだまだ全国区の大学ではないということです。私自身も学長就任以来、全国区の大学へ脱皮しようと、積極的に取り組んできました。しかし、まだまだ全国的な知名度は不十分です。東京、大阪という2大都市のはざまにあるという地域的な制約も、確かにあります。しかし、幸いにもこの地域は、いま最も全国的に注目を集めています。そうした状況の下で、もっと大胆に広報活動を進めてもいいのでは、と考えています。かつて「これからは世界中の学生から注目される大学でなければ、生き残っていくことはできない」と、ある新聞の対談で申しました。その時には、「全国区の大学よりは、世界的な大学になるほうが早いでしょう」と、言われましたけれども(笑)。そうした意味からも「南山学園創立75周年記念」という節目をうまく活用していくべきでしょうね。その際には、学生本人よりも、その親御さんとか、祖父、祖母といった方の心に届くようなPRを進めた方が効果的なんじゃないでしょうか。



学園内のことに目を向けて、お話しを伺いたいと思います。南山大学が学園の教育の中心を担うべきという理事長のお話がありましたが、具体的にどのようなイメージを持っておられるか、お聞かせいただけますか。まずは学長から。

学長:
一つは、入試のやり方を考えていくことですね。例えば、南山大学の入試に際して、南山学園の各単位校の卒業生ならば誰でも入学できるようにするべきと考えています。さらには、将来的には南山短大を含めた各単位校が大学の附属校とする方向に向かうべきです。そのことで大学も発展しますし、各単位校も今より発展していけると考えます。しかし、こうした話は大学を代表する立場では、なかなか話しにくいことです。ですからこの点についは、理事長ご自身が強いリーダーシップを発揮して、ことを進めていただくことを期待しています。

理事長:
長い将来を見据えて考えていくことが、確かに大切ですね。基本方針にも述べましたように、20年先の南山学園の発展を念頭に考えていかなければなりません。進むべき方向性については、多くの関係者の方が気持ちを同じくしていると思います。大学を中心として教育の連携を図るという言葉は、誤解を招くかもしれません。教育の内容や方法を中心となる大学で統制した方が良いと考えているかのように捉えられるかもしれませんが、私自身はそうは思っていないのです。しかし先ほど学長もおっしゃったように、外から見れば、聖霊学園の卒業生も南山学園の卒業生も、同じ学園の卒業生と捉えられます。学生たち自身も、同じ学園の学生として意識しております。あまり意識していないのは、むしろ教員の方かもしれません。と言っても、幸いなことに大学と高校の連携などは、よく取れてくるようになってきました。短期大学と大学との単位交換制度も始まっています。そのあたりから始めていくことで、高校の先生と大学の先生が協力しあって教育を進められる場面が、もっと増えてくると思うのです。こうしたことは、いったん軌道に乗れば、各現場の教員や場合によっては学生・生徒たちから、どんどん良いアイデアが出てくることでしょう。私自身がいちばんやりたくないのは、ワンマン経営者のようにトップダウンで物事を進めていくことです。教育ではそれをやると、だいたい失敗しますね。典型的なのは文科省でしょうが(笑)、そうではなく、私学ならではの特色を生かした教育を進めていくことが大事だと思います。
単位校ごとの交流がほとんどないという状態が、これまで長く続いてきました。そのため、ぞれぞれの現場が独立して教育を進めることが前提となっていました。しかしこれからは、各教員が「自分たちが属しているのは南山学園だ」という意識改革をしなければと思うのです。



教員の意識改革という点では、何か具体的な方策をお持ちですか?

理事長:
例えば、大学の先生が各単位校で様々な活動できるようにするとか、中学・高校の先生が大学入試に対して適切なアドバイスをするとか、いろいろなことができると思います。各単位校間での教員の交流や、交換が活発になれば、自然に新しいアイデアが活発に出るようになるでしょう。大学と高校の交流を積極的に進められるよう、検討していく必要があるでしょう。



学長:
そうした大きな改革は、ボトムアップに頼るだけでは非常に長い時間がかかってしまいます。トップのリーダーシップを適切に発揮することが大切でしょうね。トップとなる人がきちんとコンセプトを出していくことで初めて前に進んでいける。私が学長になる以前は、変化することを忌避しようという空気が強かった。「学長が改組という言葉を出しただけでクビが飛ぶだろう」という言葉さえ、聞こえてくることもありました。そのため、私が学長就任して最初の所信表明を出す時点で、あえて「改組」という言葉を打ち出しました。こういう言葉を組織にきちんと示すことができるのは、リーダーだけなのです。


理事長:
ですから、理事長基本方針の中にも、あえて誤解をおそれず「附属校化」「共学」という言葉を盛り込んだのです。


理事長がおっしゃった、大学の先生方と中学・高校・短大の先生方の交流については、学長としてはどのような見方をしていらっしゃいますか。

学長:
各単位校から大学の教員を派遣してほしいという声があれば、いつでも喜んで送り出したいと考えておりますし、各先生方も喜んで出向いておられます。広い範囲ではないのですが、大学と各単位校との交流は拡大しつつあると思います。また、入試に関しても各単位校からの卒業生をより受け入れていこうとする姿勢も、学内で高まってきたように感じられます。



理事長、あるいは理事会に向けて、学長から要望したいことはどんなことでしょう。逆に理事長から大学に要望されることは何かございますでしょうか。

学長:
学長としては、理事長に具体的に何かしてほしいということは、特に申し上げません。学園のメンバーとしては、理事長がきちんと基本方針を打ち出しておられることを高く評価しておりますし、これからも積極的にリーダーシップを発揮されることを期待しています。

理事長:
理事長方針を打ち出すまでには、3年という長い時間を要しました。それまで各単位校はそれぞれ独立して動く姿勢が目につきました。しかし、もっと上手く学園内のメンバーそれぞれが手を取り合って、お互いが発展していけるだろうと考えました。その際に、どこに中心を置くかといえば、やはり大学だろうと。しかし学園全体をまとめるのは、理事会の仕事です。ここで問題になるのは、理事会の構成メンバーです。構成メンバーの中心となるのは、各単位校の代表者です。理事会の話し合いに、各単位校を代表する立場で臨んでしまうと前向きな議論はなかなかできません。そのため、各単位校の代表者である以前に、学園全体の発展を考える立場にあることを自覚していただきたいと思います。現在は、そうした姿勢が理事会の中で浸透してきていると思います。また、大学に対しては、大学から各校に向けて、何が提供できるかを常に真剣に模索していただくことを望みます。大学教員の意識改革が必要であるならば、ぜひそのように働きかけてほしいと思います。

学長:
私自身も理事会に臨む際は、学長としての立場ではなく、学園のメンバーとして学園全体の発展をまず第一に考えるようにしています。ただし、先ほども申し上げたように、例えば「附属校化」というような話は、学長の職にある以上はどうしても言いにくいテーマになってしまうことはやむを得ません。大学から各単位校について何が提供できるかという話が理事長からありましたが、逆に高校や短大での教育についてのノウハウを提供していただきたいこともあります。語学教育などは、まさにそうです。習熟度別のクラス分けでの語学教育を全学的に進めていこうという合意はできているのですが、そのためのノウハウやスタッフの提供なども含めて、高校や短大の先生方のご協力を必要としています。

理事長:
理事長方針に示した「附属校化」と「共学化」の二つを、今年はぜひ積極的に進めたいと考えています。

学長:
まさに理事長のリーダーシップが必要になる問題でしょうね。実際、短大にとってもその二つの実現は大きなプラスになると思いますよ。


南山学園が一つになることで、どのように社会的に貢献していけるかという視点が大切になるのでしょうね。最後になりますが、南山大学として今後どのような方向性を目指していくのかを語っていただけますか。

学長:
南山大学は、創立者が考えた通りの真の意味での「総合大学」になっていくべきと考えています。「総合大学」となるためには、より理工系のファクターを充実させなければなりません。2002年に「数理情報学部」を立ち上げましたが、これをさらに充実させていく必要があります。この地域はものづくりの地域です。地域社会のニーズに応えるという点で、ものづくりを視野に入れた社会との連携をいま以上に強化していきたいと思います。あと2年の任期中に、きちんとした形のものとして社会に認知されるよう努力していきたいですね。



理事長:
私も学長も神言会のメンバーとして、カトリックの世界観に基づく人間教育を行う教育を体現する使命を持っています。学園の教育方針として、「キリスト教世界に基づき学校教育を行う」という建学の精神が大前提としてあります。その基本の上にあれば、理工系の学部の強化など、教育はいろいろな形で行われていいと思います。理工系だから、建学の精神に合わないというようなことは、言いたくないと考えています。

学長:
神言会の創立者であるアーノルド・ヤンセンは理工系の人なんですね。神言会を興してからも、哲学・神学大学で主に自然科学を教えていました。だから、どうして自然科学が本学の精神に合わないなどという間違った認識が生まれたのか、私自身は不思議で仕方ないんです。

理事長:
その背景にあるのは、アメリカ的なリベラル・アーツ・カレッジの発想でしょうね。教養をメインにして教義を伝えようとすると、理科系はいらないという発想になる。ただ、そういう大学のイメージも徐々に変わりつつありますね。

学長:
南山大学の長期計画について考える際に、私の前には三つの選択肢がありました。一つは、理事長が挙げられた「リベラル・アーツ」の考え方です。ICU(国際基督教大学)のモデルですね。2番目が、現在私たちが進んでいる方向性。3番目は、「均衡縮小」の考え方です。要するに18歳人口が減っていくのに合わせて、大学の規模をそのまま小さくしていくというものです。1番目は非現実的だと思いました。それはICUのような伝統があり、しかも関東に位置しているからこそ可能になるやり方です。人口が全然違いますからね。この地域ではこれは無理です。3番目は、とんでもない方法です。先人から受けた遺産を食いつぶすだけですからね。必然的に、現在のような方向性にたどり着いたというわけです。



たくさんのお話しがでました。まだまだ話は尽きませんが、最後に今日のお話に付け足しておきたいことがありましたら、ご自由にお話し下さい。

学長:
実は、理事長のことは高校卒業の頃から存じ上げております。私が神学大学の3年生だった頃に理事長は同じ大学に新入生として入学してきたのです。二人ともロマン派の音楽が好きだったことから、すぐに仲良くなりました。私の方が先に日本に来て、その後に理事長が来日されたわけです。そうした二人が、今こうして手を携えて、共に南山学園のために働くことができるのは、とてもうれしいことと感謝しております。

理事長:
南山学園にあって現在のような仕事ができるのは、私にとっても大きな喜びです。南山学園が従来の形でずっととどまっている必要はなく、これからどんどん変わっていくべきと、私自身も考えています。



お二人のなれそめをお伺いし、大学と学園の連携はますます強くなっていくだろうとの思いを強くし、今後の展開に大きな期待を感じています。
本日はどうもありがとうございました。

( 2006年4月21日)



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